シロハナガサウミウシとユビノウハナガサウミウシ

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しばしば同種とされてはまた別種とされて呼称が混乱し続けているシロハナガサウミウシとユビノウハナガサウミウシ
2017年に出た論文で新展開がありましたので紹介します

参考論文:Yonow N. (2017). Results of the Rumphius Biohistorical Expedition to Ambon (1990). Part 16. The Nudibranchia – Dendronotina, Arminina, Aeolidina, and Doridina (Mollusca: Gastropoda: Heterobranchia). Archiv für Molluskenkunde. 146(1): 135-172.

この論文のの中でこう書かれています

馬場菊太郎が1949年に新種記載した Tritoniopsis alba は、 1969年の論文で Tritoniopsis elegans とした種と同じである。よって Tritoniopsis alba は無効な学名である。
更に、ウミウシガイドブック3で Tritoniopsis alba として紹介されている種は別種で、 Tritoniopsis cf. frydis である

1949年に相模湾産後鰓類図譜で新種記載されたシロハナガサウミウシの図

1969年の論文で記載されたユビノウハナガサウミウシ

ウミウシガイドブック3 のシロハナガサウミウシ

この情報を順番に正しく整理すると、1949年にシロハナガサウミウシとして新種記載した種は、 Tritoniopsis elegans なので、 Tritoniopsis elegans の和名は シロハナガサウミウシ になる。

1969年の論文で Tritoniopsis elegans の和名を、ユビノウハナガサウミウシとしたが、すでに和名があるのでこれは無効。

ウミウシガイドブック3 のシロハナガサウミウシは、Tritoniopsis cf. frydisで和名はない。

となるのですが、色々疑問が生じます。

1. T. elegans とT. alba のDNAの比較がされていない

どちらの種も日本で見れるので比較をして欲しい

2. ウミウシガイドブック1などに載っているシロハナガサウミウシはスルー

ウミウシガイドブック1、本州のウミウシ、沖縄のウミウシに載っているシロハナガサウミウシはすべてユビノウハナガサウミウシなのか、どうなのかそういった記載はされていない
ただし、Gosliner et al. 2008 の T. albaは T. cf. frydis と書かれているので、シロハナガサウミウシに関しての記載があると言えばある

というわけで整理すると

シロハナガサウミウシ、ユビノウハナガサウミウシは同種ではなく別種

ウミウシガイドブック1&3、本州のウミウシ、沖縄のウミウシでシロハナガサウミウシとされていた種は、Tritoniopsis cf. frydisだった

それらの図鑑で、ユビノウハナガサウミウシはTritoniopsis elegansとされている

というわけで、世界のウミウシではとりあえずシロハナガサウミウシTritoniopsis cf. frydisと表記します

和名に関してはバージョン管理も整理もされていないのでどこでどうなったのが追うのがとても大変。。
日本は妙に和名にこだわるのでそういった役割を担える仕組みが絶対必要ですね

この論文では他に

クシエラウミウシの属が変更となっています
二次鰓の形が違うのにみなドーリス属とされていたのでわかりやすくなった気がします

キイロクシエラウミウシ
キイロクシエラウミウシ
Doriopsis granulosa Pease, 1860

アオクシエラウミウシ
アオクシエラウミウシ
Doriopsis pecten (Collingwood, 1881)

以上です

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