世界で1種とされていたコンシボリガイが4種に分けられました

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コンシボリガイ

コンシボリは世界に広く分布していますがこれまで1種とされていました。
それらをDNAで比較したところ4種に分けられることがわかったそうです

なお、青い個体と黄色い個体に分けられたわけではありません

Micromelo undatus (Bruguière, 1792)

M. undatus

これまで世界で使われていた学名
大西洋全域で相対的な遺伝的同質性が見られる

Micromelo guamensis (Quoy and Gaimard, 1825)

Micromelo guamensis

グアム、パプアニューギニア、フィリピン、マーシャル諸島で確認されている。
本種は外見上の形態が異なり、体に不透明な白色の斑点が他の種よりも大きく、密に並んでいること、縁に黄色の帯がないことが特徴である。

Micromelo scriptus (Garrett, 1857)

Micromelo scriptus

ハワイ諸島からインド洋までのインド太平洋地域に広く分布する(ハワイ、台湾、モザンビーク、南アフリカ、サモア)
体側に広い間隔で白い斑点があり、斑点と斑点の間の距離は斑点そのものと同等かそれ以上であること、頭盾の長さは幅と同じくらいで、長さの中間部は突出して狭く、M. undatusに比べて後方の縁は滑らかであることで、他種と区別できる。

Micromelo barbarae sp. nov.

Micromelo barbarae sp. nov.

フィリピンと日本からのみ
体に広い間隔で白い斑点があること、頭盾が幅よりも長く、後方に大きく伸びていること、殻の頂点が開口部の後端よりもわずかに伸びていることなど

さて難易度の高すぎる間違い探しですが

日本にはどれがいるということになるのでしょうか?

地理的には、
M. undatus はいません
M. barbarae は八丈島から採集されているので間違いなくいるでしょう。フィリピンにもいることから南西諸島でも見られる可能性がありますね。
M. scriptus はインド洋からハワイまで広く分布していて、かつ台湾からも見つかっているので日本にもいる可能性は十分にあります。
M. guamensis は地理的にはいてもいなくてもおかしくないです。

特徴を比べると
青色の帯があるのは、M. guamensis であるかのように書かれていますが、一方で論文中にはこのように書かれているため色ではなく白い斑点の大きさや形、距離で見分けられるということのようです。

外部の色彩パターンは、ある程度の種の区別に用いることができる。例えば、体にある白い斑点の大きさや形、それらの間の距離は種によって異なる(体系の項を参照)。しかし、カラーパターンは、4種の中で自然な種内変異を示しているが、ある色が他の色よりも多く見られる。具体的には、黄色の体縁色は大西洋種のM. undatusに多く見られ、鮮やかな青色の体縁色は南西太平洋種のM. guamensisに多く見られる。

M. guamensis:
不透明な大きな複合白斑で覆われており、ほとんど触れ合うように密に配置されている斑点間の距離は斑点自体よりもずっと小さい

M. scriptus:
小さな楕円形または複合型の不透明な白色斑で覆われている。

M. barbarae
大きな楕円形または複合型の不透明な白色斑で覆われており、斑点の間隔は斑点自体と同じかそれ以上である。

相対的すぎてわかりにくいですが、貝殻の後ろにあるマントみたいな部分の斑点を見るとこれらの特徴がよく出ているのである程度はそこで見分けられるかもしれません。が、評価している個体数が少なすぎる上に日本の南西諸島や本州で採集がされていないために分布がよくわからないですね。またインドネシアのデータもなく困ってしまいます。
そして4種に分かれたことでどれがコンシボリなのか貝殻を見て評価をしなければなりません・・・。これがいちばん大変な気がしますね

そんなわけで非常に困った論文の紹介でした。

参考文献

Molecular and morphological analyses reveal pseudocryptic diversity in Micromelo undatus (Bruguière, 1792) (Gastropoda: Heterobranchia: Aplustridae)

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14772000.2021.1939458

-> 世界のウミウシでコンシボリガイを確認する

追記

殻は薄く,体層には茶褐色の螺状の色帯が 3本あり,その聞に同色の縦の細かい色帯がある。螺塔は体 層の上端より,先端がわずかに見える。 1996年に採集した個体の大きさは,殻高9.4mm, 殻径6.2mmであった。 本種に類似するチャシボリガイ Micromelo undαtus (Bruguiere) とは分布域が異なるほか,殻口が大きい,体型がやや細長い,螺塔がわずかに見える,螺状の色帯聞の縦の模様が細かいこと等で区別できる。
—Notes on Micromelo guamensis (Quoy & Gaimard) from Miyake Island, Izu Islands, NISHIMURA,Kazuhisa & TEZUKA,Yoshiji, 2000 ちりぼたん

三宅島産コンシボリガイについて という論文内でコンシボリガイ、チャシボリガイについて触れられていますが、その中で掲載されている種は青い個体ではありません、またチャシボリガイは カリブ海で記載された Micromelo undatus に対しての和名であろうことがわかります。

青黃は区別されずにコンシボリガイであったということになるのでやはりどの種に対して和名をあてればいいのか不明。 Micromelo undatus はチャシボリガイで確定となるのかなと思います。

 

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