以前から書こう書こうと思っていたニシキウミウシについて、2023年1月時点、世界のウミウシが思うことを書き残しておこうと思います。
フルーツポンチウミウシがが初めて出てきたのは1999年発売の海洋生物ガイドブック[1]です
持っているのが第1版でないので新称とされていないのですが、どこかの版で新称とされているフルーツポンチウミウシです。
このときはアオウミウシの仲間と考えられていたようで、不明種だったことがわかります。
ニシキウミウシと思われてなかったことはニシキウミウシのページを見てもわかります。
2000年に発売されたウミウシガイドブック2では下記のように網羅して紹介されていて、説明文も参考になります。
フルーツポンチウミウシ=ニシキウミウシなんじゃない?と思いつつ、師匠である益田一さんに従う鈴木敬宇さんという感じでしょうか。フタイロニシキウミウシの成長が完全に追えているのでポイント高いんですけどね。
そして最新の2020年は…
フタイロニシキウミウシ[上][右下]、南方系バリエーション[左下]も全部ニシキウミウシとされていてフルーツポンチやニシキウミウシは載っていないという状態です。ではなぜこうなったのか?
これは割と簡単にわかるのですが、海外(オーストラリアやフィリピン)にこれだけのバリエーションがいないから、そしてウミウシ研究者がとても少ないから、です。
The Sea Slug Forum で フタイロニシキウミウシが投稿されている[4]のですが、相模湾後鰓類図譜のフタイロニシキウミウシに似てるけどちょっと違うねというコメントがされています。
相模湾後鰓類図譜の該当ページを見ると、フタイロニシキウミウシは幼体が新称と記載されていて、大人はニシキウミウシとなっているのもわかりますね。
ここで明確にフタイロニシキウミウシは記載されているので有効名として間違いないと思うので、世界のウミウシではそれを採用しています[5]。そして、ウミウシガイドブック2の成長過程に矛盾がないことは大量に写真を集めている世界のウミウシを見てもわかるので大人のニシキウミウシ?もフタイロウミウシとして登録しています。ここはテレビが間違っていたので書いておきます。
さてそうなると、フルーツポンチ、どこいった?ってなりますよね。
本州のウミウシにて、” Rudmanによると、馬場がニシキウミウシを3型に分けたが内的差異は認められずにすべて変異の範囲であること、さらにフタイロニシキウミウシ、フルーツポンチウミウシ、ハナエニシキウミウシも本種の色彩型となる ” と書かれています。そしてこれが2023年現在までも採用されているということになります。
が、これの参考文献が不明で[6]、、しかもニシキウミウシ(元記載はインド)は色彩パターンは多種多様だが形はみんな一緒、世界中で1種しかいないというわりと乱暴な結論のまま今に至るというのが現状です。
結論として
- フルーツポンチウミウシはニシキウミウシの幼体に付けられた名前であるので、通称ではなくニシキウミウシのシノニム(異名)
- 育ったニシキウミウシをフルーツポンチと呼ぶ人はいない気がする
- 馬場はニシキウミウシを3種に分け、それとは別にフタイロニシキウミウシを記載している[7]
- 国内のニシキウミウシに隠蔽種がいた場合にフルーツポンチウミウシのようなものを見分けるのはおそらく困難。テヌウニシキも幼体はそっくりで見分けられない気がしている。
- 成長過程を見ても、論文を見てもフタイロニシキウミウシは独立した種だと思われるが、全部ニシキウミウシとしたRudmanの言葉を覆す必要がある。これは日本のニシキウミウシ数個体のDNAを調べればわかる。