サキシマミノウミウシの変遷

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サキシマミノウミウシ

サキシマミノウミウシというウミウシは伊豆では非常にポピュラーなウミウシですが実は名前が大混乱しているウミウシでもあります
調べていて疑問がだいぶ解けたので興味がある人は読んでみてください

相模湾産後鰓類図譜〈補遺〉

サキシマミノウミウシ

サキシマミノウミウシ Flabellina ornata (Risbec)

自分で調べた範囲で サキシマミノウミウシ という和名を確認できる一番古い資料が相模湾産後鰓類図譜〈補遺〉
1955年出版です
この時点で新称と書かれていないので更に古く命名されたものと推測されますが、見つけることが出来ませんでした
※持ってる人、知っている人教えてください

この絵だけから考えると左が現在のケラマミノウミウシ、右がサキシマミノウミウシの可能性があるようにみえます
ですが図鑑が手元になく文章を確認出来ないので、そこは一旦無視して先に進みます

Flabellina ornata (Risbec)

Flabellina ornata (Risbec) を調べると疑問がいくつか生まれます

Flabellina ornata Angas, 1864 : synonym of Austraeolis ornata (Angas, 1864)

1. 著者が Risbec ではない

これは、以下のような結果になっていました
Coryphella ornata Risbec, 1928 : synonym of Flabellina bicolor (Kelaart, 1858)

この内容は、この論文で確認出来ます
Gosliner, T. M. (1980 [“1979”]). The systematics of the Aeolidiacea (Nudibranchia: Mollusca) of the Hawaiian Islands, with descriptions of two new species. Pacific Science. 33(1): 37-77., available online at http://scholarspace.manoa.hawaii.edu/handle/10125/1455

Flabelina alisonae

Flabelina alisonae

論文中に DISTRIBUTION: Southern Japan (Abe 1964, Baba 1955), Okinawa (Baba 1936)
と書かれているので南方系のものを示していることがわかります
Flabellina alisonae という新規学名がついていますが、後にFlabellina bicolor のシノニムになっています。

よって、相模湾産後鰓類図譜〈補遺〉で記載されている南方系のものは Flabellina bicolor であるということで確定します。

余談ですが、ケラマミノウミウシという和名はウミウシガイドブック―沖縄・慶良間諸島の海からで、Flabellina sp. に与えられてて、以下に経緯などが書かれています

初版でサキシマミノウミウシとケラマミノウミウシの2つにしていたのを2版では双方ともサキシマミノウミウシにしてしまい、「沖縄のウミウシ」でもひとつの種として2つの写真を出しています。これは、ウミウシガイドブックの初版がほぼ正解でした(平野先生の見解でした・・・)。

サキシマミノウミウシとは・・・ : 小野にぃにぃの海と島んちゅ生活

2. Flabellina ornata Angas, 1864 ってなに?

学名でよく起こってしまう問題だと思いますが、属は違うけど種小名が同じ2種
Coryphella ornata (Risbec, 1928)
Flabellina ornata Angas, 1864

現代なのでインターネットなどで調べられますが、気づかずに
Flabellina ornata (Risbec, 1928) と属を変更した結果名前が被ってしまったのでしょう

Flabellina ornata (Risbec, 1928)
Flabellina ornata Angas, 1864

こうなってしまうと、別種なのに古いほうが優先ということになるので、 Flabellina ornata Angas, 1864 と勘違いされてしまい、その結果日本近海産貝類図鑑でこの学名が表記されてしまっているようです。
サキシマミノウミウシ – JODC Dataset – Biological Information System for Marine Life

Flokati Nudibranch-Austraeolis ornata
Austraeolis ornata (Angas, 1864)

というわけでこの学名は全然違う種ということがわかります

本州のウミウシ沖縄のウミウシ

サキシマミノウミウシの学名は Flabellina macassaranar Bergh, 1905 とされています
小野にぃにぃのブログにも出てくるのでなにか共通の認識があったのだろうと推測されますが、唐突ですね

Flabellina macassaranar Bergh, 1905

Bergh, L. S. R. (1905). Die Opisthobranchiata der Siboga-expedition. Siboga-Expeditie. 50: 1-248, pls 1-20.

この論文には以下のようなことが書かれています
・(たぶんインドネシアの)マカッサルの水深27〜32mで採集されたこと
・背中の色は、触覚の軸、触手、触手の色と同様に、赤みがかった黄色である
・触覚の先と背側突起の先は真っ赤で真上を向いている
・背側突起は6対

相模湾産後鰓類図譜〈補遺〉に出てくるサキシマミノウミウシは明らかに白いし浅場に多いので疑問が残る同定となっていますが、2004から現在まで国内ではこのまま流通しました

Samla takashigei Korshunova, Martynov, Bakken, Evertsen, Fletcher, Mudianta, Saito, Lundin, Schrödl & Picton, 2017

Samla takashigei

そんななか2017年に以下の論文で大瀬崎で採取された個体より Samla takashigei という新しい学名が付きます

Korshunova, Tatiana, Alexander V. Martynov, Torkild Bakken, Jussi Evertsen, Karin Fletcher, Wayan Mudianta, Hiroshi Saito, Kennet Lundin, Michael Schrödl & Bernard Picton. 2017 Polyphyly of the traditional family Flabellinidae affects a major group of Nudibranchia: aeolidacean taxonomic reassessment with descriptions of several new families, genera, and species (Mollusca, Gastropoda). ZooKeys 717: 1–139.

これによってようやく、 相模湾産後鰓類図譜〈補遺〉 の右側に書かれた種に名前がついたことになります
よって、サキシマミノウミウシの学名は Samla takashigeiとなりました
ちゃんちゃん

と言いたいところだけど、仮にサキシマミノウミウシという和名が南方系の種に与えられた和名であれば Flabellina bicolor の和名がサキシマミノウミウシになりますし、結局ややこしい話が残ってしまいますね
※Baba (1936) Opisthobranchia of the Ryukyu (Okinawa) Islands. に Coryphella ornata を石垣島で採集とある

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