Siphopteron citrinum とレモンウミコチョウ

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Siphopteron citrinum シフォプテロン・キトリヌムは CarlsonとHoffによって1974年に記載されました。 模式産地はグアム。体は基本的に透明で、体表には黄色、橙、ピンクの細点が入るとされています。

Siphopteron citrinum


2013年、南西諸島の後鰓類 1 頭楯亜目という論文上で、Siphopteron citrinum とされているウミウシにレモンウミコチョウという和名が与えられました。 ところが、その時に使われた写真は、体表に黄色、橙、ピンクの細点が入っているものではなく、単色で塗りつぶされた様なボディを持つ個体でした。

レモンウミコチョウ


 

その後、2015年に発刊された Nudibranch & Sea Slug Identification – Indo-Pacific という図鑑では、この2種は別種という扱いになっていました。
前者は Siphopteron citrinum で、後者は Siphopteron sp. です。

この場合、レモンウミコチョウという和名は、どちらに充てられるのが正しいでしょうか?

こういう問題を考える際、まず、前提として、和名は学名に対して与えられるものではないということを頭に入れておかなければなりません。
日本人の研究者が、1つの標本個体に対して、同時に学名と和名を提唱した場合、これは学名=和名になります。
ところが、学名を提唱した標本個体Aと、和名を提唱した標本個体Bが別の個体だった場合、学名と和名は連動しません。
その時はAとBが同じ種だと思われていても、その後、別種となった場合、名前はそれぞれの個体に充てられることになります。

このことから、キイロウミコチョウという和名は、後者の写真個体に対して付けられた名前であると言えます。
(但し、編集で写真そのものが間違っていたという場合はこの限りではありません)

このような経緯を踏まえ、世界のウミウシでは以下のように登録しています。(クリックすると各ページに飛びます)

Siphopteron citrinum 和名なし
Siphopteron sp. レモンウミコチョウ

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