新年あけましておめでとうございます
本年もウミウシの情報を出来るだけ発信していきたいと思っています
どうぞよろしくお願いします
さて、新年一発目はカンランウミウシを遺伝子の系統解析により分類しなおした論文の紹介です
カンランウミウシ属の種は定義が曖昧であったこともあり、世界中の種を
カンランウミウシ Polybranchia orientalis (Kelaart, 1858) としてきましたが
元記載と系統解析により地域固有の種とされました
Polybranchia orientalis (Kelaart, 1858)
Photo by http://www.underwaterkwaj.com
※世界のウミウシに写真がないので論文中に載っているわかりやすい写真を借りています。
スリランカ、インド、フィリピンより確認されていて、背皮突起が濃い褐色の細点で覆われます
論文中に日本の図鑑からの引用もたくさんありますが、カンランウミウシとされて載っている種は本種でないことが暗示されています。
では、カンランウミウシとされて載っている種がなんとされているかというと
カンランウミウシ Polybranchia sagamiensis (Baba, 1955)
本州のウミウシの左下の写真とウミウシガイドブック1の写真が本種であろうとされています
今後新規に採集されれば推測の部分も補完されると思います
カンランウミウシ Polybranchia sagamiensis | 世界のウミウシ
Polybranchia jannae Medrano, Krug, Gosliner, Biju Kumar & Valdés, 2018
その他日本にもいる種で記載されたのが本種です
特徴としては、クモの巣に似たような白い線が背側突起に入ることと、全体に多数の小さなオレンジ色と紫色の細点が入ることです
本種の参考文献として、Kimoto N. 2017. Polybranchia orientalis (Kelaart, 1858). Available at: https://seaslug.world/species/Polybranchia_orientalis/2636 と書かれていて論文に名前が載っていました
ポリブランチア・ヤンアエ Polybranchia jannae | 世界のウミウシ
Polybranchia jensenae Medrano, Krug, Gosliner, Biju Kumar & Valdés, 2018
Photo by http://www.underwaterkwaj.com
全体に小さな白い突起があることが特徴で、広く分布しています
また、これまで Polybranchia orientalis と図鑑でされていたものが本種である場合が多いです。
転石下にいるようです
ポリブランチア・ジェンセンアエ Polybranchia jensenae | 世界のウミウシ
Polybranchia samanthae Medrano, Krug, Gosliner, Biju Kumar & Valdés, 2018
Photo by http://www.underwaterkwaj.com
こちらも広く分布していて、インド太平洋全域に分布します
その他
オーストラリア固有種 Polybranchia burni Medrano, Krug, Gosliner, Biju Kumar & Valdés, 2018
カリブ海固有種 Polybranchia schmekelae Medrano, Krug, Gosliner, Biju Kumar & Valdés, 2018
バハカリフォルニアからガラパゴス固有種 Polybranchia mexicana Medrano, Krug, Gosliner, Biju Kumar & Valdés, 2018
参考文献
Medrano S., Krug P.J., Gosliner T.M., Biju Kumar A. & Valdés Á. (2018). Systematics of Polybranchia Pease, 1860 (Mollusca: Gastropoda: Sacoglossa) based on molecular and morphological data. Zoological Journal of the Linnean Society. , available online at http://10.1093/zoolinnean/zly050/5077298
この内容はすでに発売中の図鑑でも確認可能です