2021年後半に読んだウミウシの論文を紹介します

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もうそろそろ2021年も終わりですね。今年は新規記載の論文が少なめで紹介するのもサボっていましたが何を読んだかわからなくなっちゃうのでササッと紹介だけしておこうと思います

1. アミメイバラウミウシに学名がついた

アミメイバラウミウシ Okenia nakanoae Paz-Sedano, Wilson, Carmina, Gosliner & Pola, 2021

Okenia nakanoae Paz-Sedano, Wilson, Carmina, Gosliner & Pola, 2021

Okenia属を網羅的にDNA系統解析した論文になります。
Okenia tenuifibrata Paz-Sedano, Wilson, Carmina, Gosliner & Pola, 2021 も含め2種、日本で見られる種が記載されました。
個人的には、白くないシロイバラもシロイバラウミウシであると書かれているのがありがたいです。
一方で日本ではかなり多く見られる種がもっといるのにここに反映されていないことが残念です。

Paz-Sedano, S.; Wilson, N.G.; Carmona, L.; Gosliner, T.M.; Pola, M. (2021). An ocean yet to be discovered: increasing systematic knowledge of Indo-Pacific Okenia Menke, 1830 (Nudibranchia : Goniodorididae). Invertebrate Systematics. 35(7): 797-825.

 

2.  サラサウミウシとチリメンウミウシが未記載種になった

サラサウミウシ Goniobranchus sp.

サラサウミウシ Goniobranchus sp.

以前からサラサウミウシ は Goniobranchus tinctorius ではないと言われていましたが分子系統解析の結果を添えてそれを確定させたような論文になります。併せて チリメンウミウシも Goniobranchus reticulatus ではないと書かれています。
これら背中が赤い網目状になっている種たちは少なくとも5つの未記載の分類群からなる近縁種のグループと書かれています。

記載はされていませんが、ヒャクメ・サラサ・チリメンがそこに含まれています。

問題としては「Goniobranchus reticulatus」ってじゃあどういう種なの?って問には答えられていないことでしょうかね・・・。写真はなく記載の絵のみになります。

Soong, G. Y.; Wilson, N. G.; Reimer, J. D. (2020). A species complex within the red-reticulate Goniobranchus Pease, 1866 (Nudibranchia: Doridina: Chromodorididae). Marine Biodiversity. 50(2).

 

3. 嚢舌類の大規模な系統解析と盗葉緑体の機能保持期間が長い種を明らかにした

3行にまとめると
・嚢舌類すべてが盗葉緑体機能を持っているわけではない
・2週間以上保持できるのは5種確認された
・系統樹をみるとチドリミドリガイ上科は属どころか科を整理するのもとても大変そう

Hirokane, Y., Miyamoto, A., Kitaura, J. et al. Phylogeny and evolution of functional chloroplast retention in sacoglossan sea slugs (Gastropoda: Heterobranchia). Org Divers Evol (2021). 

 

4.  学名 Flabellina rubrolineata は紅海、アラビア海、地中海に限られる種である

Coryphellina rubrolineata O'Donoghue, 1929

Coryphellina rubrolineata O’Donoghue, 1929

以前から言われていたことですが、ダメ押しな論文でしょうかね
残念ながら日本の個体に関する言及がなされていないので、日本でセスジミノウミウシと言われていた種類はみんな未記載種となってしまいました。

Ekimova, Irina A., Tatiana I. Antokhina, and Dimitry M. Schepetov. 2020. “Molecular Data and Updated Morphological Description of Flabellina Rubrolineata (Nudibranchia: Flabellinidae) from the Red and Arabian Seas.” Ruthenica, Russian Malacological Journal 30(4): 183–94.

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