2021年3月9日、あるニュースが世間を騒がせました。ウミウシの自切と再生。頭だけになったウミウシが元気に動いている動画を目にした方も多いと思います。よく知られる「トカゲの尻尾切り」と違って、心臓さえも含む体の大部分を失ったウミウシが、数週間後に完全に体を再生したという驚きの事実。それは日本の若き研究者によって発見されました。発見した三藤さんにお話を伺いました。
三藤清香(みとう さやか)…奈良女子大学・大学院人間文化総合科学研究科の博士後期課程2年。遊佐陽一教授のもとでコノハミドリガイを含む嚢舌類のウミウシの研究を行う。
ウミウシとの出会いと継代飼育
――三藤さんとウミウシの出会いについて教えてください。
私が初めて囊舌類のウミウシに出会ったのは学部4回生の時です。
嚢舌類とはウミウシの一種で、使った歯を保持しておくための袋(舌嚢)を持つ。多くは藻類を餌とし、葉緑体を取り込んで光合成を可能にする種もいる。
奈良女子大では4回生で卒研配属があるのですが、私は生態学を研究するために遊佐研を選びました。遊佐先生が扱う動物の中からテーマを選ぶ際、光合成を行うウミウシの不思議な行動やかわいらしい見た目に惹かれ、ウミウシを研究することにしました。
――その時点の研究室では、どんな環境でウミウシを生育されていたのですか?
私が研究室に入るまでは本格的な飼育はされていませんでした。野外で採集したウミウシを使って光合成の生態的意義や走光性を調べる実験が行われていましたが、採集したウミウシを餌と一緒に水槽に入れておき、卵を産んだらたまに幼生を育ててみるものの、ほとんどの種類は育たず…という感じだったようです。
――やはりウミウシの飼育は簡単ではなさそうですね。卒業研究はどんなテーマだったんですか?
囊舌類ウミウシの生活史の解明です。まずは卵から次の代の卵までの継代飼育を成功させ、生活環を回すことが目標でした。
――研究は順調に進みましたか?
最初、完全飼育はなかなかうまくいかず、始めてから半年くらいは失敗続きでした。幼生の段階であまり育たずに死んでしまう…という繰り返しで。飼育や実験に失敗して落ち込むたびに、ウミウシのかわいさでやる気を取り戻す、そんな毎日でしたね。
多くのウミウシはふ化した後、しばらくの間を幼生として浮遊しながら過ごし、ある程度成長すると着底して私たちのよく知る姿に変態します。
そんなふうに過ごしていたら、その年の秋頃になって遊佐先生がコノハミドリガイを採集してこられたんです。そして、この種で初めて完全飼育に成功しました。
――半年!それは大変でしたね。初めて完全飼育に成功した時の感想を教えてください。
やっと成功した嬉しさもあり、「これで卒研が成り立つ」という安心感もあり、というのが正直な気持ちです。また、コノハミドリガイは一度目の飼育で変態に成功したことで少し運命的なものも感じました(笑)。
その時は深く考えていなかったのですが、コノハミドリガイは成体のサイズが大きいため成長が早く、また餌であるハネモも育てやすいことから、飼育にかなり適した種のようです。これにも勝手に運命を感じています。
――長い時間、真摯に向き合ってきただけにほっとしたでしょうね。コノハミドリガイの変態を初めて見た時の印象はどうでしたか?
顕微鏡を覗き込みながら「わあ、かわいい」とにんまりしてしまいました。
――ウミウシ愛が伝わってきますね!研究は無事終わりましたか?また、ウミウシの飼育はその後も続けていたんですか?
コノハミドリガイの飼育成功と、ヒルギミドリガイが変態には至らなかったものの飼育条件間で差が出ていたため、卒業研究は無事に終わりました。
その後もコノハミドリガイは常に研究室にいる状態をキープしていました。現在は、鹿児島系統のものと隠岐系統のものを維持しています。
また、ヒルギミドリガイの飼育にも成功し、現在100個体以上を研究室で育てています。こちらはかなり寿命が長い種なので、どんどん増えていきます。
――世界的に見ても難しいウミウシの継代飼育を続けられているのは本当にすごいことですね。三藤さんは自切と再生の発見に至るまでにウミウシと寄生者の研究もされていますよね?
はい。寄生者との関係の研究を始めたのは、修士研究からです。
修士研究では、クロミドリガイとその寄生者(カイアシ類の一種)の関係を研究しました。
カイアシ類は微小な甲殻類。多くは浮遊生物として生活するが、ウミウシなどに寄生する種もいる。
――何がきっかけだったんですか?
囊舌類とその捕食者や寄生者といった「囊舌類から栄養を得る生物」との関係を調べた例が過去になかったんです。また、4回生時にクロミドリガイが多数生息する瀬戸内海の向島で採集した時の寄生率がかなり高く、どのような関係があるのだろうと疑問に思ったこともきっかけのひとつです。
――確かに言われてみると気になりますね。研究を進めて行く中でこの寄生は両者にとってどんな関係に見えましたか?
寄生されたとしても、ウミウシもやられっぱなしというわけでもない、その対抗手段が今回発見した自切なのではないかと現段階では考えています。
コノハミドリガイの大規模自切と再生
――自切の話が出てきたところで、まずは三藤さんのこれまでの研究について時系列でまとめてみました。
2017年春 嚢舌類のウミウシ研究開始
2017年秋 幼生の変態を観察
2018年1月 コノハミドリガイ完全飼育成功
2018年4月 クロミドリガイと寄生者の関係を研究開始
2018年8月 コノハミドリガイ自切発見
1〜2ヶ月おきに自切観察
2019年6〜8月頃 クロミドリガイ自切発見
2020年8月 自切誘導実験
2020年9月 ベントス学会での発表
2021年3月 Current Biologyに論文掲載
――こんな感じですね。では、さっそくコノハミドリガイの自切を初めて発見した時のことを聞かせてください!
継代飼育で維持していたコノハミドリガイの1個体が、ある日、頭と首に分かれているのを見つけたんです。しかし、この頃は産卵で弱るのを防ぐために一匹ずつ隔離して飼っており、飼育水槽にはコノハミドリガイ1個体とエサしかなく、攻撃するものもいません。それで、状況から考えるとこれは自切したのだろうと。
でも、ウミウシの自切例はこれまでにもあったとはいえ、私自身はそれまでトカゲの尻尾の自切しか見たことがありませんでしたし、自切に対するイメージもトカゲのように「敵から逃げるもの」「体の末端というごく一部を切る」という認識でした。
敵も危険な物もない安全な水槽の中にも関わらず、突然、心臓を含む体の大部分を切ったことにかなり驚きましたし、とても困惑しました。
――そりゃあ驚きますよね。発見後、周囲の人(遊佐先生など)にはすぐに伝えましたか?
遊佐先生やその場にいた研究室の先輩にすぐに伝えました。反応は「えー!気持ちわるー!」という感じだったと思います。
――なるほど。みなさん、まさかこんな大発見に繋がるとは思ってなかったんですかね?
そうですね、私を含め「再生する」と思っていた人はその時点ではいなかったと思います。
――その後、三藤さんはどんな行動を取ったんでしょうか?
しばらく普通に飼育して様子を見ることにしました。ウミウシは死ぬとすぐに体が溶けてしまうのですが、ちぎれた頭も体もその兆候はなく元気に動いていましたし、頭は餌も食べていて、なんと体側に残った心臓も拍動し続けるのが見えていました。
――発見段階から、通常のウミウシの死とは状況がかなり違っていたんですね。再生に気づいたのは何日後のことでしたか?
首切れから7日後です。飼っているうちに「頭側がなんだか伸びてきたような?」とは思っていたのですが、ウミウシが元気そうにしているので「一応記録を撮っておくか」と何気なくスマホで録画していたんです。「頭だけのアップも撮っておこうかな」くらいのつもりで頭にズームしてみると、自切で体の大部分とともに失ったはずの心臓の脈動が見えたんです。そこで「再生している!」と。
――発見した時はどんな思いでしたか?
とにかく驚きました。ウミウシに限らず、心臓という重要な臓器を自切して再生する動物なんて聞いたことがなかったので、まさかまさか…でも目の前で実際に心臓は動いているし…という感じです。なんとなく凄いことが起こっているのではないかと思っていました。
――この時はコノハミドリガイの継代飼育を続けながら、クロミドリガイの寄生について研究中だったと思うのですが、自切と再生というテーマでも研究してみようと思いましたか?
自切発見後、すぐに研究を始めようとは思っていませんでした。1個体だけにたまたま起こったことかもしれないので、しばらく様子を見ることにしたんです。
しかし、その後も1〜2ヶ月おきに自切が起こり、コノハミドリガイは合計6個体(飼育しているコノハミドリガイの33%)、次の年にはクロミドリガイ3個体(全体の2%)の自切も観察できたので、そろそろ論文報告しようと追加実験をしてまとめたのが去年のことです。
――完全飼育の成功から7ヶ月経ったくらいから1〜2ヶ月おきに自切となると、完全飼育の成功が今回の発見につながったように感じますね。自切の観察を重ねるごとに、三藤さんの気持ちや周囲の方々の反応に変化はありましたか?
最初はウミウシが死ぬかもしれないとビクビクしていたのですが、観察を重ねるたびに「まあ切れても大丈夫だろう」と慣れていきました。特に高齢な個体は自切後の再生はできませんでしたけどね。遊佐先生は、首を切ってみない?とノリノリでした(笑)。
――ノリノリでしたか(笑)。最初は様子見だったと思いますが、具体的な研究や実験を考え始めたのはいつ頃のことだったんでしょう?
去年の8月頃です。9月のベントス学会での発表や具体的に論文を投稿しようという話になり、自切にかかる正確な時間や過程の綺麗な写真も撮りたかったので急いで自切誘導実験に取り掛かりました。
――どのような実験をしたのか、いま一度詳しく伺ってもいいでしょうか?
行った実験はコノハミドリガイに対する首締めと模擬捕食操作の2つです。
まず、首絞めはテグスを使って物理的な刺激を与え、自切を誘導できるかどうか確認しました。自然界で起こるとすれば、コノハミドリガイが餌のハネモを食べているうちに首に絡まって絞めてしまうような状況に当たるでしょうか。飼育下でも、餌が首に絡まって外せなくなっている個体を見たことがあります。ただ、クロミドリガイの場合は餌のミルがウミウシに対してかなり太いため、自然に首が締まることはほぼありません。
模擬捕食実験の方は、捕食者に襲われていると考えられる状況をピンセットなどで再現しました。
実験結果は、首絞めでは実験を行った6個体すべてが心臓を含む体の大部分を自切し、一週間程度で心臓を含む体部を再生しました。一方で模擬捕食実験の方は自切が起こりませんでした。
――実験前、自切を促せるだろうという確信はありましたか?
そうですね。首絞め実験の方はおそらく自切につながるだろうと考えていました。
囊舌類のウミウシは首元に溝のような構造があり、自切した個体は全てそこで切れているということが観察でわかっていました。また、自切する動物の多くはもともと自切面という切れやすい構造をもっていることが知られており、ウミウシはそこが自切面なのではないか、刺激を与えれば切れるのではないかと予想しました。
一方、捕食実験の方も自切には至らないだろうと予想していました。十数時間かけて体を全部切り離しても捕食者から逃げられるとは思えませんし、普段ピンセットで誤って傷つけてしまったり、スポイトで吸い込んだりと少々手荒なことをしても自切は起こらなかったので。
――首絞め実験によって自切と再生を促せた時はどんな気持ちでしたか?
やったー、でしょうか(笑)。できそうな気はしていたものの、実験で誘導できることがはっきりわかり、今後いろいろ活かせるだろうと嬉しかったですね。
――再生完了したウミウシはどんな様子でしたか?
今回は頭も体も解剖せずに見守っていたので、心臓以外の内臓をどのくらいなくし、どのくらい再生したかという内部はよく分かっていません。ですが、外から見て元と同じ体の要素が一通り揃ってはいます。ただ、再生完了とはいっても、元に比べると体はやや小さめで、いびつな形になることも多いです。
――ちなみに前章では、自切と再生の目的として「寄生者の排除」の可能性を挙げられていました。詳しく伺えますか?
実はクロミドリガイの自切が起こったのは寄生された個体のみで、非寄生個体はまったく自切が起こらなかったんです。それなら寄生者の排除の可能性が高いかな、と先生と話をしながら少しずつ考えていきました。統計的な有意差は得られていないので正解はまだわかっていませんが。
――クロミドリガイは寄生者によって産卵を阻害されるということでしたよね。再生後の産卵は確認できましたか?
まだ確認できていません。ウミウシは雌雄同体ですが自家受精はできず、産卵には2個体が必要になります。また、一度交尾するとしばらく精子を貯めておき、好きなときに産卵できます。
コノハミドリガイの場合は1個体ずつ隔離して飼っており、交尾相手がいない状態でした。自切前に交尾経験のある個体もいましたが、位置的に貯精嚢は自切で失ってしまったようです。
クロミドリガイは実験中でペアにして飼っていましたが、自切して再生した後には既にペアが死亡していたり、相手は元気でも寄生者がついていたり…と、やはり交尾条件はあまりよくない感じでした。
そのため、自切後に産卵が可能かどうかは今後明らかにしていきたいと考えています。
――なるほど、楽しみですね。今回の発見は大きな話題になりましたが、どう感じましたか?
先生とは「今回の自切は面白い内容だと思うし、一般にもウケはいいだろうね」と話していたのですが、ここまで話題になるとは思っていませんでした。深夜に記事が公開された後、私が起きる頃には既にツイッターでバズっていたそうで、友達や知り合いからもたくさん連絡をいただきました。ひたすらびっくりです…(笑)。
論文公開前から海外を中心にたくさんの取材依頼をいただき、かなり忙しい日々を過ごしました。また、国内でもいろんなメディアで取り上げていただいたり、学内の賞をいただいたり、注目されているな、というのはひしひしと感じています。
大変なこともありましたが、こんなに自分の研究が注目してもらえるのは研究者冥利に尽きるというか、やはりありがたいことだと感じています。この機会にウミウシの面白さ、かわいさをしっかりアピールできたらと思います。
――実を言うと私は最初すごく意外だったんです。ウミウシの調査や研究は確かに近年始まったばかりとはいえ、日本の、しかもまだ20代の若き研究者がこんな大発見をするとは…と。ウミウシ愛好家は山ほどいるのに見つけられなかった、確かめられなかったんですよ。お話を聞いていく中で、三藤さんはウミウシのことを本当にかわいく思って大切に丁寧に、かつしっかりと飼育・観察していたことがよくわかり、だからこそだったのかな?と思いますが、三藤さん自身、何が要因だと思いますか?
やはり、完全飼育に成功していたことが大きいと思います。囊舌類は飼育できる種も少なく、モデル生物種もおそらくいません。そのため卒業研究で完全飼育の研究を行ったのですが、基礎的なことから学べる、比較的時間に余裕のある学生だったことも、飼育成功の一因かもしれません。また、偶然ですが一匹ずつ隔離して飼育していたのも発見には重要な要因だったと思います。一匹ずつ長期間飼育・観察できる状態にあったことが良かったのではないでしょうか。
また、個人的なことですがウミウシへの愛情は誰にも負けない自信があります(笑)。細かい作業や、細部の観察が得意なこともいい方に作用したと思います。遊佐先生曰く、「執念深い」だそうです。
――完全飼育に成功していたのは、本当大きかったですよね…自切と再生もすごいけれど、その舞台を整えたことがこの発見の序章だったように感じますし、今後も違った新発見に繋がりそうな期待が持てます。
ちなみに、遊佐教授から見た三藤さんは…
普段は昼から夕方にかけて大学に来て、深夜から朝に帰るという生活を送っています。これはウミウシのためでなく、本人の体内時計が狂っているためです。私を含む研究室の人もウミウシも迷惑しています(笑)。
とはいえ、ウミウシを愛でて丁寧に世話し、ずっと見守るということにかけては、ウミウシ研究者の中でもダントツだと思います。今まで恐らく誰も見たことがなかった大規模な自切を発見し、その再生の過程を逐一追えたのはやはり本人のウミウシ愛のためかと思います。
また、今回の研究のベースになったのは、コノハミドリガイで卵から成体までの完全飼育に成功していたことです。これに成功したのも本人の努力の賜物と言っていいでしょう。
今後の取り組みとメッセージ
――これから研究してみたいテーマはありますか?
ウミウシの自切と再生に関しては、もう少し詳しく調べてみたいと思っています。例えば、
- 他にどんな種がやるのか、囊舌類以外にやるものはいないか
- 自切・再生に必要な条件は何か(餌、光合成はどのくらい必要?)
- おそらく首元にあるであろう幹細胞の培養や移植
まずはこのような感じでしょうか。
――これからも目が離せませんね!ところで、ダイバーや研究者の中では捕食されて頭だけになったウミウシを目撃したこともあると聞きます。自切以外でも再生はすると思いますか?また、それについて研究したいと考えていますか?
実験としては首を直接切り落とすことになると思います。今後実験を検討中ですが、やっぱり少々はばかられるというのが本音です。再生するかどうかわからないため、死んだら申し訳ないなと…。
――大規模な「他切」でも再生が確認されると、今回の自切の発見の捉え方も変わってきますか?
どうなんでしょうか。もしそうだとすれば、まず前提に高い再生能力があり、それを利用して自切も行うし他切にも耐えられる、ということになるのでしょうか…。ただ、自切自体の意味はあまり変わらないかもしれません。まだまだ調べたいことがたくさんありますね。
――三藤さんは今後も研究者として生きていかれるんですか?
卒業後も研究を続けていきたいとは思っていますが、なかなかポストも少ないので、現時点ではどうなるかまだわからないです。先生も心配しておられました…(笑)。少なくとも、志望は研究者です。
――ぜひともがんばってください!それでは最後にメッセージをお願いしたいのですが、ダイバーなどウミウシ愛好家のみなさんへ。それから、ウミウシの生態や研究に興味がある方、その他にメッセージを送りたい方がいたら自由に、という感じでお願いできますか?
では、まずはウェットスーツで泳いだり磯で動物を観察したりする人に向けて。
採集初心者の私が言えたことでもないですが、ウミウシを見つけたら、とにかくじっくり見て観察してください。もしかすると、今まで知られていなかった餌がわかったり、おもしろい行動が見られたりするかもしれません。
ウミウシの生態や研究に興味がある方へ。
干潮のときにタイドプールを探すと、意外といろんな場所にウミウシがいます。まずじっくり見て観察してみてください。ウミウシは柔らかくてちぎれやすいし、人間の体温でも火傷してしまいます。なるべく触らずにそっとしておいてください。あと、首切りはできたら試さないでほしいです。必ず再生できるとは限りませんし、頭だけになったものはどうやっても野外では弱くなります。なるべく動物や環境を傷つけず、お互いのことを知るのがよいと思います。ただし、私たちは、研究としてどのような嚢舌類の種が自切能力をもつのか、必要最小限の個体を使って調べたいと思っています。そのためにはさまざまな嚢舌類と餌の海藻が必要です。私たちの研究をお手伝いいただける方は、奈良女子大学水圏生態学講座までご連絡ください。
最後に、ウミウシについて一緒に研究してくれるメンバーを遊佐研はいつでも募集しています。興味のある方、奈良女子大に来てみませんか?誰もが予想していなかったような、驚きの現象が見つかるかもしれません。
――ありがとうございました!
ウミウシ研究にたくさんの時間と愛情をかけ、丁寧に、真摯に、ウミウシと向き合い続けている三藤さん。「運命を感じた」と語っておられましたが、コノハミドリガイたちが彼女を選んで自切と再生という生命の神秘を見せてくれたような気がします。今後の活躍を期待しています!
取材協力 三藤清香・遊佐陽一教授
取材・編集 川添 繭
提供 世界のウミウシ
参考
論文「Extreme autotomy and whole-body regeneration in photosynthetic sea slugs」
研究内容「光合成するウミウシで大規模な自切と再生を発見 心臓をなくしても大丈夫。驚くべきウミウシの能力」