本ブログで以前、図鑑『新版 ウミウシ』のインタビューをさせていただいたダイバーのMayuです。私の運営する個人ブログで「世界のウミウシ」運営者である木元さんにインタビューを行ったのですが、さらにウミウシに突っ込んだお話も伺ってみたいと思い質問攻めしちゃいました。
ウミウシダイビングをやってみたい!ウミウシにもっと詳しくなりたい!という方の参考になる…かも?
お話を聞くひと…木元さん。「世界のウミウシ」中の人。現在ダイビング歴10年のAOW(PADI)。経験本数は790本。お仕事はプログラマー。
大物狙いの海でもウミウシを探す。それがウミウシダイバー
――以前のインタビューで印象的だったのが、木元さんは世界各地の海で大物も見まくっているということ。でもそんな海でさえ、ウミウシを探すことを忘れない。いったいどれだけウミウシに費やしているのか…リアルな話も聞いちゃいました。
Q1. ダイビング本数790本のうち、ウミウシダイビングの割合は?
50%くらいでしょうか。国内ではほぼ100%です。
Q2. これまでで合計何種のウミウシを見ましたか?
1100種くらいです。
Q3. いくつの国のウミウシを見ました?
日本、フィリピン、インドネシア、マレーシア、モルディブ、メキシコ、フィジー、パラオなので8カ国です。
パラオのジャーマンチャネルでもマンタを見つつウミウシ見ましたよ。
Q4. 1日で最大何個体のウミウシを見つけたことがありますか?
数えていないのでわかりませんが、1日100個体くらい?
Q5. 好きなウミウシ上位3種を教えて!
あとでも触れますが何でもこだわりなく好きです。あえて3種あげるなら
Q6. ウミウシ愛好家仲間に「これ見たことあるぞ」とドヤ顔できるウミウシは?
- イトクズメリべ
古い海外の図鑑に載っていて、ウミウシ好きなら一度は見たい種だった。これを高確率で見られる場所を見つけて全部自力で手配して行ったのはいい思い出です。 - フトガヤミノウミウシ
本物を見たことある人はほとんどいないと思います。ラジャアンパットのナイトで見て図鑑を見てまさかって感じでした。 - ハンコッキアの一種
西伊豆の浮島の寒い時期のナイトで稀に見られます。これを探しに行って自分で見つけて水中で大興奮したけど他の人に伝わらなかったな・・・w - ハナエニシキウミウシ
小笠原固有種、主にこれを撮りに行きました。
Q7. 死ぬまでに絶対見たいウミウシは?
- Melibe leonina
アメリカ西海岸のウミウシは全部見てみたいけどこれは外せない。 - Dirona albolineata
これもアメリカ西海岸、メリべと一緒の場所で見られるらしい。 - Elysia crispata
いわゆるレタスウミウシ、カリブ海などで見られる、メキシコで探したけど撃沈。 - オーストラリアのウミウシ
急にざっくりしてますが、全部みたいです。シドニーで見れそうなのでコロナ禍後に行きたいですね。 - インド洋のウミウシ
タイ、南アフリカなどなど世界のどこでもいるのが魅力ですね。
Q8. 生きているうちに真相を知りたいウミウシの謎って?
たくさんあります。
たとえば、オーストラリアと日本ではものすごく似たウミウシが出るのですが、それが同一種なのか別種なのか。同一種だとしたらどうしてそういう事が起きるのか、とかですね。
Q9. ウミウシ繋がりで会ってみたい人は?
- 「いおワールドかごしま水族館」の西田さん
- 各地でウミウシダイビングしているガイドさんたち
- 山田さん
- 今本さん
- さかなクンさん
Q10. ウミウシが与えてくれたものは?
終わりのなさそうな趣味。
Q11. これまでウミウシに貢いだ金額って…?
年間で車が買えるぐらい貢いでいるので…考えたくないですね。
ウミウシダイビングの世界
――ウミウシダイビングには何を持っていくの?どのダイビングサービスを利用すればいいの?など、いろいろ聞いてみました!
Q12. ウミウシダイビングの時に水中に持っていく器材すべて教えて!
カメラ、ライト、ほじほじくん、結束バンド、最近は筆を追加、ピルケース、ゴムの板です。
ほじほじくん、結束バンド、筆は小さいウミウシを撮りやすくするために使います。ピルケースは移動する時に入れる用途。ゴム板も含め全部撮りにくいウミウシを撮るために使います。
Q13. ウミウシを見た記録はどうやって残していますか?
写真を撮る、世界のウミウシに登録する、ブログを書く。
Q14. ウミウシを見つけたらどんな風に観察しますか?
まず肉眼でまじまじ見ます。見えないサイズのウミウシはカメラを通して見ます。そして頭の方向や、種類を大まかに把握してから撮影します。
Q15. ウミウシを撮る時に気をつけていることは?
特徴が1枚でわかるように、できるだけぼかさず全体を写すことです。通常はf/16前後。
Q16. ご自身で撮影したお気に入りのウミウシ写真は?
Q17. ウミウシダイビングのガイド、バディは誰が多い?
ガイドは、海の案内人ちびすけ、ウミウシハンターズ。
バディは奥さんか、世界のウミウシで知り合った掛川さんですね。
Q18. ウミウシガイドをお願いするならおすすめは?
関東なら
- ちびすけ
- ウミウシハンターズ
- コンカラー
- コリンズDC
- サンセットリゾートダイブセンター
関西なら
温かい海がよければ
その他、世界のウミウシに投稿してくれてるガイドさんたちが全国各地にいますので参考にしてください。
自分はプロじゃないのでガイドはできませんが、呼んでくれれば一緒にウミウシを探すことはできますよ。
Q19. ウミウシのことで熱く語り合う相手は誰?
ウミウシハンターズの池田さん、ちびすけのゆいさん、掛川さん。あとはレプチンさんなど関西のひとたち。
FacebookやTwitterで随時来る質問などにも答えてるので不特定多数の人とウミウシの話はしてますね。
Q20. ウミウシダイビングをするうえで今後手に入れたい器材や書籍は?
ブラックライト
60mm程度のマクロレンズ、等倍以上だと更に嬉しい
海外のウミウシ図鑑
ブラックライトは、葉緑体が光るそうなので見てみたいです。
今使っている90mmレンズはウミウシを撮るには長すぎるので、60mmでクローズアップレンズなしでも撮れると楽だなと思います。今ちょうどいいカメラ・レンズがないのが悩み。
海外の本は、その国の人がどう同定しているのかわかるので参考になります。
Q21. ズバリ、ウミウシダイビングの良さは?
透明度が0でも関係ないことです。あまりにゴミが多いと写真が撮りにくくて困りますが、楽しむ分には関係なくて日本の海向きだなと思います。
「世界のウミウシ」の裏側
――ところで、木元さんは現在たったひとりで「世界のウミウシ」を運営している中の人。このウェブサービスの裏側についても聞いてみましょう!
Q22. 「世界のウミウシ」ロゴは何ウミウシですか?
チギレユキイロウミウシです。
立ち上げ当初の管理者である今川さんに好きなものを選んでもらいました。
デザインはちびすけのロゴも作っているやすなりゆきよさん。
Q23. 今川さん(オーシャンブルー)は今どうしているんですか?
お子さんが生まれて忙しくなってしまったのもあり、いまは世界のウミウシにはほとんど関わっていません。今年はコロナで行けませんでしたが、毎年沖縄には行ってます。
Q24. 「世界のウミウシ」のネーミングについて、エピソードを教えて!
日本のウミウシだけじゃなく、世界中のウミウシを集めたいということで「世界のウミウシ」にしました。
Q25. 「世界のウミウシ」のコンセプトは?
投稿する人は、投稿するだけで同定され自分が見たウミウシ図鑑が作れる。
そしてそれを束ねると世界中のウミウシデータが集まる。
別軸で和名がいつどこでついたのかや、その変遷も追えたらなとデータを追加していってます。
Q26. 「世界のウミウシ」をやっていてよかった、と思う瞬間は?
潜りに行った時に、世界のウミウシ使っていますと言われたとき。
この種の写真が欲しいなーと思っているものが投稿されたとき。
【ちょっと寄り道】フォロワーさんが気になる木元さんの謎
――「世界のウミウシ」中の人である木元さんにレプチンさんから寄せられた質問があったとのことだったので、ここでご紹介します!さすが人力AIって感じです…。
Q. ウミウシを見た時、これは何ウミウシだと学名にたどりつく経路が知りたいです。 私が思うに、ウミウシ名を丸暗記しているわけではなく、その形態から科、属を判断していると思うのですが、どちらもやたらめったらあるじゃないですか。 どこをポイントにしてたどりついているのか。
まず「世界のウミウシ」に登録されているかどうかを確認します
→「世界のウミウシ」に登録されている種は概ね把握しているので、写真を見たらだいたいこれかなと見当がつきます。
登録されていない場合
→ゴスライナーの図鑑を見ます。
登録されててもその内容に疑問があるとき
→論文など探して調べ直します。
それでも載っていない場合
→他の図鑑をみたり、WEBで調べたりします。「ウミウシ名を丸暗記しているわけではなく、その形態から科、属を判断していると思うのですが」とありますけど、名前があれば大体覚えてますね。名前もない、図鑑とかにも写真がないって場合は、見た目から科や属を予想してGoogle画像検索します。そうすると関係ないけど面白いウミウシとかが出てきてしまい時間が溶けます。
Q. 学名はどのように覚えたのか。 ウミウシに限らない作業だとは思うのですが、いつも不思議でなりません。
毎日大量のウミウシ写真を見ていれば嫌でも覚えます…たぶん、ウミウシ写真を見る数においては世界でもトップクラスだと思いますよ。
Q. 最新の論文をpick upする速さ。 出るか出ないかで拾ってこられますよね。 しかも、論文読むのめっちゃ早い。 翻訳ソフト使ってますか?
これはFacebookがほとんどです。見ているグループで紹介されたらすぐに調べます。あとはWoRMSで2020年に学名がついたウミウシを調べると新しい論文が出ていたりするのでそれで調べます。翻訳ソフトは最近はDeepL翻訳を使って斜め読みしてます。本読むの趣味だったので斜め読みは得意です。
Q. 未記載種らしきものを見つけたとき、変異なのか隠蔽種なのか、餌による変化なのか、本当に未記載種なのか、判断はどこでつけてますか?
この質問も大量の写真を見ているから、という感じですかね…。色は全然アテにならないと思っていて、触覚の形、模様、背中の模様、二次鰓の形状とかで見ています。でも成長具合で大きく変化するので間がたまたま埋まるとこれとこれが同一種っぽいなーと直します。なにかを厳密にやってるわけじゃなく、雰囲気です。人間ディープラーニングの結果、今がある感じです。
――人間ディープラーニング…すごいなあ。
木元さんに聞く「〇〇な人に見せたいウミウシ」
――ウミウシは多種多様なので、きっと好みも千差万別。「こんな人に見てほしい」という観点から、木元さんのおすすめウミウシを聞きました!
Q27. これを見なきゃ始まらないウミウシといえば?
アオウミウシ
日本近海の固有種で海外では一切見られないので実はレア種です。
Q28. きれいな生き物が好きな人に紹介したいウミウシは?
茶色っぽいウミウシ、平べったいウミウシ以外はみんなカラフルでキレイだと思います。名前はあれですが、フサウミナメクジなんてすごくキレイですね。
Q29. 個性的な生き物が好きな人に紹介したいウミウシは?
アオミノウミウシ。
ブルードラゴンという通称のように、まさにFFに出てきそうなデザインで、生き物なのにメタリックカラーと個性が爆発しています。
Q30. レアな生き物が好きな人に紹介したいウミウシは?
コノハウミウシ。
浮遊系のウミウシで魚のように泳ぎます。大瀬崎で11〜12月頃、潮と風次第で見られます。
Q31. そっくりさんを見分けるのが好きな人に紹介したいウミウシは?
- シンデレラウミウシとカグヤヒメウミウシ
- センテンイロウミウシとニヨリセンテンイロウミウシ
触覚に白点があるかないか、線が1本あるかないかという世界なので間違い探しを本気でしたい人に向いているかもしれないですね
ウミウシについてもっと知りたい人は
――ウミウシに詳しくなりたい!でも、信頼性の高い情報でないと心配!という方へ。チェックすべき情報源も聞いておきましたよ!
Q32. ウミウシ関連書籍でおすすめは?
『新版ウミウシ(小野篤司)』、『Nudibranch & Sea Slug Identification(Terrence M. Gosliner』。
Q33. ウミウシの最新情報を得るためにフォローしておくべきSNSやウェブページは?
以前書いた記事をぜひ参考にしてください。
参考記事:ウミウシに関する情報の集め方
いかがでしたか?
ウミウシについて、木元さんについて、こんなことも聞いてみたい!という方はぜひ木元さんに連絡してみてくださいね。