
ドーリスの分類とカドリナウミウシ属、そして新属 Showajidaia が記載された新しい論文を頂いたので紹介します
難解じゃないけど長いのでかなり端折ることお許しください
ドーリスの分類について

ドーリスは形態分類学的に、 Cryptobranchs (二次鰓が完全に引っ込むタイプ) 、Phanerobranchs (二次鰓が引っ込まず上に乗っているタイプ)、HypoBranchs (二次鰓がないタイプ)に分けられます。
主な例としてあげると、
・Cryptobranchs -> アオウミウシ、カドリナウミウシ、etc…
・Phanerobranchs -> ミカドウミウシ、センヒメウミウシ、etc…
・HypoBranchs -> イボウミウシ
これらは幼体のときは形態的な差異がわからないが、成長すると明確にわかるので進化の過程を推測するヒントになると述べられています
カドリナウミウシ属について

Cadlina luteomarginata とされていたアメリカ西海岸のウミウシが複数に別れました
・Cadlina sylviaearleae (ワシントン)
・Cadlina klasmalmbergi (カナダ)
・Cadlina jannaniCholsae (ワシントン)
日本からは Cadlina japonica (カドリナウミウシ、北海道)のみ記録され、C. umiushi (コブリカドリナウミウシ?、ロシア)の記録はないですし、C. japonica も本州の記録がないので今後の課題だと思います。
また、 Cadlina luteomarginata (古い図鑑だとカドリナ・ルテオマルギナータと載っています)は太平洋西海岸北部のみに分布となっています。
昭和時代属について
まず、イガグリウミウシ属はイロウミウシ科に所属せず独立したイガグリウミウシ科に戻されました。イボウミウシ科と外部形態がよく似ているとされます。
そして、これまではイガグリウミウシ属とされていたサガミウミウシが新科・新属に移されました。
Showajidaia sagamiensis (Baba, 1937)
原記載はカドリナウミウシ属
本種を昭和天皇が採集したことから敬意を評して「昭和時代」と命名されました。イガグリウミウシ属とは歯舌が異なるとされます。
今の所1種のみの属になりますが、 Halgerda との関係性なども気になるところです。
参考文献
- Korshunova T., Fletcher K., Picton B., Lundin K., Kashio S., Sanamyan N., Sanamyan K., Padula V., Schrödl M. & Martynov A. (2020). The Emperor’s Cadlina, hidden diversity and gill cavity evolution: new insights for the taxonomy and phylogeny of dorid nudibranchs (Mollusca: Gastropoda). Zoological Journal of the Linnean Society. DOI: 10.1093/zoolinnean/zlz126/5741605., available online athttps://doi.org/10.1093/zoolinnean/zlz126/5741605