世界中で1種とされていたニイニイミノウミウシが少し分かれました

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前回の投稿から間が空いてしまいました
ニイニイミノウミウシ Moridilla brockii Bergh, 1888 に関する論文を紹介したいと思います

ニイニイミノウミウシ

Moridilla brockii は、1888年 に Beiträge zur Kenntniss der Aeolidiaden. IX. Verhandlungen der Königlich-Kaiserlich Zoologisch-Botanischen Gesellschaft in Wien (Abhandlungen). 38 にて記載され、その後は現代まで単一種として世界中に分布するとされていました。

Carmona L. & Wilson N.G. (2018). Two new species of the tropical facelinid nudibranch Moridilla Bergh, 1888 (Heterobranchia: Aeolidida) from Australasia. Records of the Western Australian Museum. 33: 95-102., available online at https://doi.org/10.18195/issn.0312-3162.33(33

2018年に、西オーストラリアから Moridilla fifo (A, C, D, E, F)
パプアニューギニアから Moridilla hermanita (B) が記載されました。

Moridilla fifoNudibranch & Sea Slug Identification 2 EditionMoridilla sp. 2 として載っています。Moridilla brockii とは見るからに別種ですが、古い本ではバリエーションとして紹介されているようです。
触角、口触手が明るいオレンジ(ほぼ赤)色。背側突起は内側が長くオレンジ色、外側は短くて先が白い。尾はオレンジ色。と特徴が多くて同定しやすいですね。

一方で Moridilla hermanita は本からの参照が書かれていませんが、NSSI2の Moridilla sp. 1 とは違うのかな?という疑問があります。
触角は白く、先端だけオレンジ色。口触手の1/3は白く先端だけオレンジ色。背側突起は内側が白くコイル状に巻き、外側は先端がオレンジ色。尾は白色。

この2種で比較すると真反対な特徴なのでわかりやすいといえばわかりやすいです。

Schillo, D.; Wipfler, B.; Undap, N.; Papu, A.; Böhringer, N.; Eisenbarth, J.-H.; Kaligis, F.; Bara, R.; Schäberle, T. F.; König, G. M.; Wägele, H. (2019). Description of a new Moridilla species from North Sulawesi, Indonesia (Mollusca: Nudibranchia: Aeolidioidea)—based on MicroCT, histological and molecular analyses. Zootaxa. 4652(2): 265-295., available online at https://doi.org/10.11646/zootaxa.4652.2.3

そして2019年にインドネシアの北スラウェシ島から Moridilla jobeli が記載されました。

Moridilla jobeli は触角の前方は滑らかで後方にだけ突起がある。触角のベースは半透明で先はクリーム色、先端はオレンジ色(もしくは茶色)。触角の後方には白い斑点がある。頭部、口触手も半透明、クリーム色、オレンジ色の部分がある。
背側突起は内側に湾曲、内側の長い部分は白く基部はオレンジ、外側は短く小さい。尾は白色。

本種は2018年の2種と比べて特徴がかなり日本で見られるニイニイミノウミウシに似ていると思いますが、この論文中で別に紹介されている Moridilla sp. がニイニイミノウミウシになるのではないかと思います。

この論文では、 Moridilla brockii が インドネシアのジャワ島で採取された1つの個体から記載されていること。色などの重要情報が抜けていること。Noumeaella 属と特徴が非常に近いことなどから、Moridilla brockii を特定する困難さが書かれています。

また全体に共通して、体色は普通白いが個体差でオレンジ色が濃くなるものもいるという特徴が書かれています。

バリ島でもたくさん Moridilla brockii ? はたくさんいますし、日本でも広範囲で見ることができますので、今後調査が進めば更に細分化されるのではないでしょうか。

参考論文

  • Bergh, L. S. R. (1888). Beiträge zur Kenntniss der Aeolidiaden. IX. Verhandlungen der Königlich-Kaiserlich Zoologisch-Botanischen Gesellschaft in Wien (Abhandlungen). 38: 673-706, pls. 16-20., available online athttp://biodiversitylibrary.org/page/13296113
  • Carmona L. & Wilson N.G. (2018). Two new species of the tropical facelinid nudibranch Moridilla Bergh, 1888 (Heterobranchia: Aeolidida) from Australasia. Records of the Western Australian Museum. 33: 95-102., available online athttps://doi.org/10.18195/issn.0312-3162.33(33
  • Schillo, D.; Wipfler, B.; Undap, N.; Papu, A.; Böhringer, N.; Eisenbarth, J.-H.; Kaligis, F.; Bara, R.; Schäberle, T. F.; König, G. M.; Wägele, H. (2019). Description of a new Moridilla species from North Sulawesi, Indonesia (Mollusca: Nudibranchia: Aeolidioidea)—based on MicroCT, histological and molecular analyses. Zootaxa. 4652(2): 265-295., available online athttps://doi.org/10.11646/zootaxa.4652.2.3
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