図鑑写真のススメ その1 図鑑写真とは何かを考える

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図鑑写真というと、被写体を真ん中に収めた日の丸構図の写真をイメージする方が多いと思います。また、以前は、この日の丸構図の写真は良くないものという誤った認識や偏見を持った人が多かったように思います。
日の丸構図は誰でも撮れる、初心者が多用する構図だ、面白みがない、そんな考え方があったからでしょう。

しかし、その考え方は変わってきています。

しっかりとピントが合って、その生物の特徴を隅々まで捉えた図鑑写真は芸術写真に匹敵する美しさがあります。撮影機材の進歩や撮影技術の向上により、最近の水中生物図鑑で使用される写真は非常にクオリティが高いです。
また、そういう写真は、テレビ番組や、雑誌、論文など、各方面から貸し出しのオファーも絶えません。
そして、図鑑写真は思ったより撮るのが難しいです。難しい故に面白いし、撮った時の喜びも大きいのです。

 

では、「ウミウシの図鑑写真を撮る」と言っても具体的にどのようにすれば良いのでしょうか? 言葉で説明するのはなかなか難しいですよね。

 

そこで、私なりに考える図鑑写真の撮り方+αをまとめてみましたので、以下の4つの項目に分けて説明していきたいと思います。

  1. 図鑑写真とは何かを考える
  2. 撮影機材を揃える
  3. 撮影時に気を付ける事
  4. 写真を整理・加工する

第一回目は「図鑑写真とは何かを考える」です。

 

私は、水中写真には、図鑑写真、芸術写真、そして、スナップ(記録)写真の3つがあると思います。

 

図鑑写真という定義は公にはありませんが、図鑑写真とは、文字通り、図鑑での使用に耐えうる写真です。

1枚の写真から、その被写体の外観の特徴が分かる事が理想です。

ウミウシはその殆どが扁平な形をしているので、基本は背面からの写真が良いと言われてますが、体高があるものなどは、斜め前方からの撮影でも良いです。また、横方向からの方が特徴を捉えやすいものは横方向からの撮影でも良いと思います。

図鑑写真の例

図鑑写真の例


芸術写真というのは独創性や美しさを追求する写真です。
 
一部の模様だけを切り取ってみたり、正面や、ある時は背面から撮影する事もあります。
景色の中の一部としてウミウシを入れて撮影するのもそうですし、ある1点だけにピントを合わせて、他の部分をわざとボカしてみたり、露出を意図的に極端に設定してハイキーにしたり、ライティングを工夫して、シルエットを撮ったりするのも芸術写真のテクニックだと思います。

芸術写真の例

芸術写真の例

でも、こういった写真は種の同定が難しいので、図鑑写真としては使えません。
私は芸術写真を否定するつもりはありませんし、こういう素敵な写真も撮りたいと思っていますが、図鑑に使う写真はこうであってはいけません。


ダイビング中に、カメラを片手にパシャパシャとシャッターを押しているのは殆どがスナップ写真です。
私もガイド中はそういう撮影スタイルです。

スナップ写真の例

スナップ写真の例

 

そういった写真でも、何枚かに1枚くらいは図鑑用に使える写真も入っています。
だけど、意識して図鑑写真を撮るのと、何も考えずに撮るのでは、結果に大きな差が出てきます。


そこで、もう一度、ウミウシの図鑑写真とは何かを考えてみます。
 
まず、最初にも言った通り、1枚の写真で全体が写っている事、適切な露出(明るさ)で、細部までピントが合っている事。これは基本です。

センジュミノウミウシ

センジュミノウミウシ

 

更に、良い写真を目指すにはもっと細かいところを意識する必要があります。

  • 触角や二次鰓、背側突起が波で揺られていないか
  • 触角や二次鰓が出ているか
  • 体が不自然に捻じれていないか
  • 水平バランスは良いか
  • 背面に砂やゴミが乗っていないか
  • ウミウシの手前に不要な写り込みはないか
  • 奇形個体ではないか

 

殆どのウミウシは、体の右側に両性生殖門や肛門などの器官がありますので、右側から撮影すると、それらの器官が写る事もあります。 こういったものが写っている写真は図鑑的にも評価が高いです。また、そのウミウシのホストなど、生息環境が写っているものも良い写真と言えます。

トリトニア・ボーランドイ

トリトニア・ボーランドイ

 

ピントが合って、ウミウシが生き生きしている図鑑写真は、芸術写真にも負けない美しさがあると思います。
次からは、これらの事を意識しながら写真を撮ってみて下さい。今までとは一味違った写真が撮れるかもしれません。

チギレユキイロウミウシ

チギレユキイロウミウシ

 

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